Q6 全くの初心者にはフォームから?
(系列店ラケットワールド梅田への質問となります)

会社のテニス部で仕切り担当をやっておりますペコパと申します。
全くの初心者が入部することになりました。
自分も我流なのですが、全くの初心者には
素振りから教えた方がよろしいでしょうか?
フォーム抜きに、球出しや打ち合いをした方が良いのでしょうか?

P.N ペコパ

A
こんにちは!
初心者の方の入部おめでとうございます!!
そしてその質問、悪くないだろう!!

初心者、とはいえ身体能力、球技体験のあるなしによって
かなり変わってはくるのですが、もちろん
まずはフォームでしょう、いきなりラリーなんておこがましい、
とすぐに考えてしまいがちなのが、
「日本人」 あるあるですよね!!

確かに上達するにはフォームは超大切です。
しかし「テニス」というスポーツの「初心者」においては、
これを先に重視するとかなりの確率で大変なことになります。

そうですね、ではまず、みんなが分かりやすそうな、
卓球(テーブルテニス)をイメージしてみましょう。

身体能力に自信があるとはいえない、
卓球初心者2人がラケットとボールを初めて持って
30分卓球をしてみました。

①15分、基本と言われる順回転のドライブと逆回転のカットの
 振り方をきっちり習ってから、
 残り15分2人でラリー、ゲームをしてみる。

②持ち方だけ覚えて30分間当てるだけでラリーをして、
 続いてきたらゲームをしてみる。

どんな30分になるかイメージできましたか?

①ではおそらく、時折すごい打球がコートに突き刺さるものの、
ラリーがほとんど続かず、
球を拾いに行っている時間の方が長くなりそうです。

②の方が時間がたつごとにラリーが続きはじめ、
卓球というスポーツを楽しめそうですよね。

もしかしたら2人のセンスがあまりにも高く
②だけでは簡単すぎて飽きてしまうかもしれませんが、
そうなった場合は①に転向すればいいんですが、
いきなり①で始めて上手くいかなかった場合、
(たいてい上手くいかない)
卓球って楽しくないな~と、感じてしまうかもしれません。

なので、この場合の正解としては
いきなりフォームを教えることから始めず、
「当てるだけで良いからラリーが続いた後に、フォーム」
ですよね!

テニスの話に戻りますが、もちろん、テニスも一緒です。

さらにコートとボールが大きいテニスは、
卓球よりもこの当てるだけのラリーがいきなりできる人が
圧倒的に少ないんです。

まずはいきなり長い距離で行わず、
ネットを挟まず、短い距離から始めてみましょう!
この手順は動画でアップしました!!
簡単ですのでぜひ参考にしてみてくださいね!!



長い文章になりましたが、
その初心者さんがペコパさんの導きで
テニスが大好きになり、
いつかはきっとテニススクールを訪れてくれることになるので、

悪くないだろう!!       
             完

ここから↓は、きっと読んでおいて損はない?
清水コーチの余談コーナーです。
今回は上記質問から派生したテニス界全体の
真面目なお話し!?

経験者の皆さんもきっと思い出せるはずです。
たいていの初心者の方がテニスを最初に楽しいな!と
感じる瞬間は、ラリーがたくさん続いたときに訪れます。

しかし、10数年ほど前まで日本のテニス協会は、
いきなりフォームから始めるという指導をを推奨していました。

さらには協会の発行する指導教本にも書かれ
推奨されているフォームが、
まず最初にいきなり体をしっかり横に向けて
ラケットをしっかり後方に引いた形から入っていたので、
(時間的に余裕のある場合に勢いを自分から足す形)
打点にすぐ入ることができず余裕の作れない初心者の方が
それでラリーをしようとすると

・間に合わない
・ラケットの勢いが出すぎて飛びすぎたり空振り
・ゆっくり打てない

ということが「ほぼ確実」に起こり最初のうちは、
時折すごいボールが入ってもラリーが続くようになるまでに
かなり時間を要したのです。
(昔学校の体育の時間にだけテニスを習ったことが
 ある人は少し思い出してみてください、
 テニスを楽しめましたか?)
その間にテニスを離れてしまう人が
本当にたくさんいたのですが、
日本ではそれは仕方なし、とされている空気がありました。

しかしアメリカやヨーロッパの協会では先に
それがテニス人口の莫大な損失であることに気づき、
フォームベースの指導から、
ラリー、ゲームベースへの指導へ切り替えていきました。
この方式をプレイ+ステイ(プレイアンドステイ)と言います。

赤色、オレンジ色、緑色の空気の抜けたボールを使って
フォームを覚える前にゲームを覚えよう、という考えです。

最初はジュニアから、
のちに大人の方へも取り入れられていきました。
それが成功してテニス人口が増えたことにより
日本のテニス協会も近年は
従来のフォームベースの指導から
プレイ+ステイ方式をかなり強く推奨しています。
(特にジュニア)

推奨され始めた当初は、
最初から技術を教えたいコーチ達から
批判の嵐でしたが、私自身も10年ほど前から
このプレイ+ステイの考えをジュニアに取り入れたことにより、
それまでだったら上手くなる前にテニスから
離れてしまうような子供がテニスを好きになって
続けられるようになっていく姿をたくさん見てきました。
現在ジュニアレッスンをしている
インドアテニスワールド石切でもその考えを取り入れ、
子供の数が増えてきているのを実感しています。

この考え方をスクールのコーチに浸透させ、
日本全体のテニス人口を増やそう、
というのが協会の指針で、
数年前よりもずいぶん広まったかと思います。

しかし私は、このテニスの始める時の考え方が、
職業コーチ以外の、
一般のテニスをされている方にまで広がれば、
テニスをしたことのない友人、家族にもつながり、
もっとテニスが好きな人が増えるのになぁ、
と考えています。

最近でも、スクールの「レンタルコート」で、
友人にテニスを始めてもらうんです♪
と経験者の方が身体能力の高い男性に
いきなりトップスピンを教えていましたが、
ボールがあちこちに散らばり、ボール拾いが大変そうで、
最初は楽しそうでしたが2回訪れた後は、
もう見かけることがなくなりました。

テニス協会の方からも、
プレイ+ステイを推奨するスクールに、
ジュニアの保護者様から、
もっと打ち方を教えてあげてほしいとクレームが
入ることがあるので理解してもらってくださいと
注意されます。

最初からきちんとした型を教えたい、
というのが日本人の「良い」気質なのですが
それが「テニス」を始める場合には災いしてしまうことが
あるのです。

動画を見てもらえれば分かりますが、
この考え方における指導はすごく簡単で、
テニスの技術がほとんどなくても誰にでもできます。

これを読んでくれたあなたがこの方法を知ってくれれば、
いつかテニスをしたことがなかった誰かを
テニス好きにさせてくれるのではないかと夢見て、
この長い余談は終わらせていただきたいと思います。

長い文章にお付き合いいただき、
ありがとうございました。